栃木県鹿沼市。かつて宿場町として栄え、今もなお情緒ある街並みが残るこの場所に、地元住民なら誰もが知る「ソウルフード」があります。

今回お邪魔したのは、創業大正14年という圧倒的な歴史を誇る老舗店「安喜亭(あんきてい)本店」

鹿沼の市街地、細い路地を少し入った場所にお店を構える安喜亭 本店。その佇まいは、まさに「昭和の正しき町中華」。暖簾をくぐる前から、歴史の重みと、どこか懐かしい出汁の香りが漂ってきます。
お昼時ともなれば、店前には行列ができることもしばしば。しかし、回転は意外と早く、店員さんの活気ある声に導かれて店内へ。椅子や使い込まれたテーブルが、なんとも言えない安心感を醸し出しています。

メニュー表には、ラーメン、シュウマイ、ワンタンなど魅力的な文字が並びますが、客の多くが注文するのはやはり豚そば(ぶたそば)680円です。

運ばれてきた丼を見て、まず驚くのはそのビジュアル。 一般的な「チャーシュー麺」を想像していると、良い意味で裏切られます。安喜亭の豚そばは、どんぶり一面が「あつあつの餡(あん)」で覆われているのです。

まずはスープを一口。 ベースは非常にあっさりとした醤油味。そこに、豚肉と玉ねぎの甘みが溶け出した「あん」が混ざり合います。この「あん」が最大の特徴で、粘度は高すぎず、さらりとしているのに麺によく絡む絶妙な塩梅。

具材はシンプルに、細切りの豚肉とたっぷりの玉ねぎ。 特に玉ねぎの火の通り加減が絶妙で、シャキシャキ感を残しつつも、噛むほどに野菜特有の甘みが溢れ出します。この甘みが、醤油スープの塩気と合わさって、深いコクを生み出しているのです。

麺は、少し縮れのある細麺。 この細麺が、とろみのあるスープをこれでもかというほど持ち上げてくれます。ズズッ、と啜るたびに、豚の旨味と玉ねぎの甘みが口いっぱいに広がり、幸福感に包まれます。

安喜亭の本店に流れる時間は、外の喧騒を忘れさせてくれるほど穏やかです。相席が当たり前のように行われ、老若男女が同じ丼に向かって箸を動かす光景。そこには、単なる飲食店を超えた「地域の宝」としての姿がありました。
メニュー
ラーメン 470円
豚そば 680円
チャーシューメン 680円
肉そば680円
店情報
店名 安喜亭 本店(あんきてい)
住所 栃木県鹿沼市下材木町1361
TEL 栃木県鹿沼市下材木町1361
営業時間 11:00~14:00
定休日 月
席数 31席
駐車場 6台

一杯の「豚そば」に込められた、100年近い歴史の重み。 派手なパフォーマンスや流行りの味ではありませんが、一口食べれば「ああ、帰ってきたな」と思わせてくれる。そんな温かさが、安喜亭の最大の隠し味なのかもしれません。鹿沼を訪れた際は、ぜひこの「豚そば」を味わってみてください。


